初めて観たときの衝撃は忘れられない。出演者の名演もさることながら、全体を貫くあっけらかんとした不道徳感がまた凄い。 人間の業とはこんなにも罪深いものなのか。 それにしても、倍賞美津子ってこんなにイイ女だったのか。この映画を観るまで気づかなかった。
原作は、凄いです。本来、映画にしようのない原作で、この映画は、やっぱり駄目でした。
緒形拳の演技が光ります。 とりまく女性もみんないい味を出してます。 邦画も世界に通用するのがあることを実感します。 ご覧になってない方は、ぜひ、一度みて下さい。
緒形拳をTV番組で何度か目にしていて、妙に存在感のある俳優だなと 気になっていたが、公開当時の劇場でこの映画を観て、その強烈な個性と 演技力に圧倒された。 神の僕として生きる父親の権威に抵抗して、人間の罪深き業を意にも介さず、 最後まで悪に執着し続けようとする、救いのない極悪男を、緒形拳は何かに とり憑かれたように演じ切る。 この連続殺人鬼の逃避行を、真っ向から生臭くどろどろと描き切った監督の 豪腕も凄いが、その演出法にしっかり応えた脇を固める役者たちの強烈な 存在感と演技はこの映画の成功に不可欠であったろう。 息子には甘い母親役のミヤコ蝶々の愛嬌がちょっと救いではあったが、老いても まだ悟り切れずに人間臭さを漂わせている父親役の三国連太郎と、緒形の嫁役の 賠賞美津子が、風呂を清掃している時にふとやり取りするシーンには、いやらしい ほどの濃密なエロスが匂っていた。 時おり人物の過去と現在の錯綜する場面があって、時間的錯乱と心理的緊張が 生じ、さらに映画に引き込まれていく。 最後に三国と賠賞が、息子緒形の遺骨を宙に投げつけるシーンの演出は、今日の CG多用のムービーではかえって出せないだろう生臭い真実味があった。
この作品は、人間がもつ業に焦点をあてた味わい深い文学作品です。一人の中年男の生涯を通して、私達に人間という複雑怪奇な生き物の深層心理を探らせ、どう生きていくべきかを問い掛けているように思います。このような邦画を作製した今村監督をはじめ、俳優陣の方々には敬服いたします。